自己歯周組織線維芽細胞を用いた歯周組織の再生治療

自己歯周組織線維芽細胞を用いた歯周組織の再生治療は、次のような方におすすめです。

1) 歯周病とは

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歯周病は、歯肉、歯槽骨、歯根膜などの歯を支える組織が炎症によって破壊される病気です。重症化すると、歯が抜け落ちてしまうこともあります。従来の治療法では、炎症の除去や、破壊された組織の修復が難しく治療に難渋することもありました。
そんな中、自己歯周組織線維芽細胞を用いた歯周組織の再生治療が注目されています。脂肪由来幹細胞は、歯周組織の再生を促進する可能性があり、歯周病治療における新たな選択肢として期待されています。

2) 歯周組織線維芽細胞とは

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歯周組織線維芽細胞とは患者様の歯周組織に存在する細胞の一種であり、歯周組織の健康を保つために必要不可欠な細胞です。歯周組織線維芽細胞は、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチンなど、歯周組織のハリ・ツヤをもたらす成分を生み出すことが知られています。
また、最近では歯周組織の再生において、重要な役割を担っている可能性があることがわかってきました。

3) 自己歯周組織線維芽細胞を用いた歯周組織の再生治療

自己歯周組織線維芽細胞を用いた歯周組織の再生治療は、患者様の歯周組織の一部を採取して、クリーンな環境のもと、細胞を増やして、必要なタイミングで患者さん自身の歯周組織に戻す(注射する)治療法です。採取される歯周組織は10mm×5mm程度で、この歯周組織を原料に歯周組織線維芽細胞を培養します。注入される歯周組織線維芽細胞はご自身の細胞ですので、安全性が高いとされています。一度の採取で長期間にわたり、冷凍保存ができるため、再び線維芽細胞を歯周組織へ再注入することが可能です。

4) 治療の効果

Healthy woman teeth and smile. Isolated over white background.

自己歯周組織線維芽細胞治療という再生医療技術を応用することで、歯周組織の再生を促す効果が期待されます。
つまり、歯周病の改善や歯周組織の再生が期待できます。

5) 治療方法と継続治療

歯周組織線維芽細胞を培養して、増やすために、元となる歯周組織を上顎や口腔粘膜など施術部位に近い組織などから10mm×5mm程度、当院の担当歯科医師が採取します。採取には局所麻酔を使用するため、痛みを伴うことはありませんが、採取した部位が元の状態に回復するには、数日かかります。
細胞の培養が完了するまで、約2ヶ月間必要となりますので、その間、お待ちいただくこととなります。細胞の培養が完了後、当クリニックでご自身の線維芽細胞を多く含んだ注射液を歯周組織には担当歯科医師が注射します。
注射後は異常等がないことを確認するために6ヶ月間は、月1回程度定期的に通院していただきます。
注射に用いなかった歯周組織線維芽細胞は細胞を培養した施設で安全に冷凍保管され、将来、必要な時に再び注射液として歯周組織に注射することができます。

6) 治療後の注意

施術当日から洗顔や化粧(メイク)は可能です。
口紅の使用は施術当日はお控えください。
当日の飲酒、サウナ、激しい運動はお控えください。
施術部位に強く圧迫を加えるようなことは避けてください。

7) リスク・副作用

歯周組織線維芽細胞は、患者様自身の歯周組織から作っていますので、ご自身に肝炎やHIVなどのウイルス感染がない場合、感染のリスクは極めて低いとされています。ただし、治療後6ヶ月間は概ね月に一度程度の来院により、下記の有害事象がないことを確認する必要があります

  • 歯周組織を切開し、歯周組織線維芽細胞を採取する際、麻酔を使用します。そのため、施術中の痛みはほとんどありませんが、注射の痛みを感じる場合があります。
  • 動物由来の原材料(ウシ胎児血清)を用いて製造しているため、稀に過敏症を引き起こすことがあります。
  • 注入直後に処置部位に凹凸が見られることがあります。
  • 針の痕が残ることもありますが、ほとんどの場合、2〜3日程度で目立たなくなります。
  • 内出血、腫れ、発赤、疼痛、かゆみ、変色、および圧痛などが現れることがあります。(1週間程度)
  • ごくまれに、切り傷が化膿したり、壊死(細胞の死)や変色、着色等の外見的に好ましくない有害事象が起こることがあります。

万が一、副作用が発生した場合、適切に症状を診察し副作用の軽減ができるよう最善の処置を行います。

8) 治療を受けられない場合

  • 局所麻酔に過敏で、歯周組織線維芽細胞を含む歯周組織((顎や口腔粘膜など)に障害(炎症)があるなど、採取が困難な場合
  • 治療中の病気があり薬を服用している方(*薬の種類によっては治療をうけることができない場合があります。)
  • 治療する目的の部位が感染している場合
  • 妊娠しているまたその可能性がある場合

その他、医師が不適切と判断する場合があります。
治療を受ける前に主治医と相談してください。

9) 治療が中止される場合

次のような場合は、治療を中止することがあります。
場合によっては、患者さんが治療を続けたいと思われても、治療を中止することがありますので、ご了承ください。

  1. 患者様が治療を希望されない場合。
  2. 検査などの結果、患者さんの症状が治療に合わないことがわかった場合。
  3. 患者さんに副作用が現れ、治療を続けることが好ましくないと担当医師が判断した場合。
  4. 標準的な細胞培養をおこなった結果、個人差等の理由により治療に必要な線維芽細胞が得られなかった場合。

その他にも担当医師の判断で必要と考えられた場合には、治療を中止することがあります。中止時には中止の理由を説明します。そして、安全性の確認のために検査を行います。また、副作用により治療を中止した場合も、その副作用がなくなるまで検査や質問をさせていただくことがあります。

■第二種 再生医療等提供計画(治療) 届出
自己歯周組織由来線維芽細胞を用いた歯周組織の再生治療  サカイクリニック62  坂井万里

10) 料金

本治療は保険適用されないため、全額自費診療となります。
本治療に係る費用は患者さんの症状、施術回数などにより患者さん毎に異なります。施術する前に詳細な施術料金を提示いたしますので、ご納得いただいた上、施術いただきますようお願い申し上げます。一般的な治療費用を下記に示します。

【初診料+血液検査】

初診料
5,000円(税込5,500円)
血液検査
10,000円(税込11,000円)

【施術料】

初回(歯周組織採取+細胞培養+細胞10cc)
3,000,000円(税込3,300,000円)
2回目以降(細胞培養+細胞10cc)
2,000,000円(税込2,200,000円)

【再診】

再診料
5,000円(税込5,500円)/回

【細胞保管料】

年間保管料(1年更新)
120,000円(税込132,000円)

《 キャンセル規程 》

【診察+⾎液検査費⽤】
いかなる理由でも返⾦不可となります。

【施術費⽤】
組織採取前・・全額返⾦いたします。
組織採取後(施術予定⽇の3週間以上前)・・90%を返⾦させていただきます。
組織採取後(施術予定⽇の3週間前以内)・・80%を返⾦させていただきます。

キャンセルに関しましては、クリニックの診療時間外はお受けすることが出来ません。
特にキャンセル締切⽇が年末年始、当院の夏期休暇や休診⽇に重なる場合がありますので、確認の上、⼗分余裕を持ってお申し付けください。

11) よくある質問

Q1. 歯周組織に対する従来型の治療法は?

歯周病治療は歯石除去や切開法などがあり、保険適応されています。それらの治療法の合併症には、出血などがあります。

Q2. 歯周組織線維芽細胞による再生医療以外の再生医療は?

歯周組織線維芽細胞による再生医療以外の歯周組織を再生する方法としては、次のような治療があります。それぞれ特徴や適用症例が異なります。

①エムドゲイン法
エムドゲインゲルという薬剤を使用して、歯周病によって失われた歯周組織の再生を促す治療です。
エムドゲインゲル歯の根の表面に付着し、歯周組織の再生に必要な細胞を必要な部位に誘導します。エムドゲイン法は自費診療です。

②GTR法 (組織誘導再生法)
メンブレンと呼ばれる特殊な膜を使用して、歯周組織の再生を促す治療です。メンブレンで骨の再生に必要な空間を確保することで、歯肉の侵入を防ぐことが可能です。

③FGF-2製剤(リグロス)
リグロスという塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)製剤を使う治療です。
リグロスを歯周病の歯槽骨の欠損部(歯槽骨にできた穴)に投与することで、患歯の周囲にある歯周組織幹細胞を活性化し、歯周組織再生を促そうとする治療法です。
FGF-2製剤は、日本発・世界初の薬剤として我が国で承認され、保険診療で臨床応用されています。

④骨移植術
歯周外科手術時による治療です。
患歯の近くから少量集めてきた顎骨(自家骨)や人工骨(合成移植材)を、歯周病の進行で歯槽骨が破壊された結果できてしまった歯槽骨の欠損部に充塡します。それによって骨を創る細胞の足場が生まれ、歯槽骨の再生が促されます。

Q3. 歯周組織線維芽細胞と真皮線維芽細胞の違いは?

歯周組織線維芽細胞と真皮線維芽細胞は、どちらも線維芽細胞の一種です。

歯周組織線維芽細胞は、歯と歯槽骨の間にある組織にあって、歯周組織の維持、修復、再生に影響を与えています。また。コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを産生し、歯と歯槽骨を結合するはたらきがあります。さらに、炎症の抑制や免疫細胞を活性化など歯周組織の中で組織の再生に大きな影響を与えています。
一方、真皮線維芽細胞は、真皮にあってコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの皮膚の構成成分を産生し、肌のハリやツヤを維持するはたらきがあります。

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