自己脂肪由来間葉系幹細胞を用いたアトピー性⽪膚炎の治療は、次のような方におすすめです。
- 子供の頃からアトピー性皮膚炎で治らない
- 難治性のアトピー性皮膚炎と診断された
- 治まっていたアトピー性皮膚炎が再発した
- 皮膚科でアトピー性皮膚炎の治療を受けても改善しない
- 繰り返し受けなければいけない治療の負担を軽減したい
- 根本的にアトピー性皮膚炎を治したい
1) アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎の患者数は、日本国内において増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、2017年には約51万人と報告されています。
アトピー性皮膚炎は、皮膚のアレルギー反応によって、炎症や痒みが生じる慢性の皮膚炎です。遺伝的なアトピー素因(*)に加えて、化学物質や食品添加物、ハウスダスト、強い紫外線などの刺激、ストレスや睡眠不足など様々な要因で症状が悪化します。
皮膚科による保険診療で症状の寛解が見られる方もいますが、完治が難しいことが知られています。そのため、先ほど挙げた要因で再発したり、悪化することも少なくありません。
サカイクリニック62では、大人のアトピー性皮膚炎に対して、ご自身の体の脂肪幹細胞を体外で培養し、その幹細胞を点滴して体内に戻す再生医療「幹細胞点滴治療」を提案しています。
(*)アトピー素因とは、
(1)本人または家族が、アレルギー性の病気(アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、ぜんそく、結膜炎など)を持っていること、
(2)アレルギーと深い関係がある免疫物質「IgE抗体」を作りやすい体質を持っていることをいいます。
つまり、『アレルギーを起こしやすい体質』を指します。
2) 自己脂肪由来間葉系幹細胞とは?
① 幹細胞とは


人は生命を維持するために、絶えず入れ替わり続ける組織を保つために、失われた細胞を再び生み出して補充する能力を持った「幹細胞」を持っています。
幹細胞には、皮膚、赤血球、血小板など、わたしたちのからだをつくるさまざまな細胞を作り出す能「分化能」と自分とまったく同じ能力を持った細胞に分裂することができるという「自己複製能」があります。
② 自己脂肪由来間葉系幹細胞とは

自己脂肪由来間葉系幹細胞(以下ADSC)とは、脂肪組織に含まれる僅かな幹細胞を分離・培養して増やした(増殖させた)細胞のことです。
ADSC はとても柔軟な能⼒を持っており、神経や⾎管など多様な細胞に分化する能⼒だけでなく、⾝体の免疫を調節する機能を有することが明らかになっています。
3) アトピー性皮膚炎と免疫
人体は常に“異物”の侵⼊を受けていますが、それに対抗して、体内に侵⼊した“異物”を排除するシステムを持ち合わせています。これを免疫と呼びます。
免疫と言えば、体にとってプラスのイメージを持つことが多いですが、アレルギーも免疫機構の1つです。
アレルギーとは、体内の無害な物質に対して、それを“異物”と判断し、攻撃してしまう免疫の異常反応です。アレルギー反応の対象となる“異物”を“アレルゲン”と呼び、⾝体にアレルゲンが侵⼊した際、アレルギーを引き起こす物質が過剰に反応した結果、⾝体に様々な症状が出現します。
その1つが、アトピー性皮膚炎です。
アトピー性⽪膚炎とは、アレルギー反応(症状)が、⽪膚に現れた状態を⾔います。
4) 自己脂肪由来間葉系幹細胞のアトピー性皮膚炎に対するはたらき
私たちの⾝体には過剰なアレルギー反応を抑えるシステム(細胞)も存在します。すなわち、過剰なアレルギー反応が⾝体に悪影響を及ぼさないように、アレルギーを引き起こす細胞とそれを抑える細胞が、お互いに各種の微量物質(⽣理活性物質ともいう)を出して、バランスをとりながら⾝体を健全な状態に導いているのです。しかし、このバランスが崩れたとき、アレルギーの症状が出るようになります。
ADSCには、この過剰なアレルギー反応を抑制する⽣理活性物質や創傷治癒を促進するたんぱく質を分泌する能⼒があると⾔われています。諸外国では重症のアレルギー患者様に適⽤され、良い結果を導くことが報告されています。
つまり、ADSCはアレルギーの一種であるアトピー性皮膚炎の改善効果が期待できるのです。
5) ⾃⼰脂肪組織由来間葉系幹細胞を⽤いたアトピー性⽪膚炎の治療
⾃⼰脂肪組織由来間葉系幹細胞を⽤いたアトピー性⽪膚炎の治療は、患者様の脂肪組織の⼀部を採取して、清潔な環境でADSC を増やし、必要なタイミングで患者様の静脈に点滴投与する治療法です。
採取される脂肪組織は5g 程度で、この脂肪を原料にADSCを培養します。治療に⽤いるADSCはご⾃⾝の細胞ですので感染症の危険性はありません。培養して増やした細胞の⼀部は、⻑期間冷凍保管して次の治療に使⽤することができます。
この治療は、厚⽣労働省に認定された「特定認定再⽣医療等委員会」での審査を経て、厚⽣労働⼤⾂へ提出した書類(計画番号︓PB3210060)に基づき実施しています。
6) 治療の効果

この治療は、ADSC のもつ、アレルギー反応を抑制する作⽤により、アトピー性⽪膚炎の症状の改善を⽬的とした治療です。
但し、治療の効果には個⼈差がありますので、あらかじめご了承ください。
7) 治療方法と継続治療
脂肪由来間葉系幹細胞を培養して、増やすために、元となる脂肪をお腹などから5g程度、採取します。採取には局所麻酔を使用するため、痛みを伴うことはありませんが、採取した部位が元の状態に回復するには、数日かかります。
細胞の培養が完了するまで、約2ヶ月間必要となりますので、その間、お待ちいただくこととなります。細胞の培養が完了後、当クリニックでご自身の脂肪由来間葉系幹細胞を多く含んだ注射液をアトピー性皮膚炎の症状が現れている部位に注射します。
注射に用いなかった脂肪由来間葉系幹細胞は細胞を培養した施設で安全に冷凍保管され、将来、必要な時に再び注射液として皮膚に注射することができます。
注射後は異常等がないことを確認するために6ヶ月間は、月1回程度の間隔で定期的に通院していただきます。
その後は、必要に応じて継続的な治療をおすすめします。
8) 治療後の注意
施術当日から洗顔や化粧(メイク)は可能です。
当日の飲酒、サウナ、激しい運動はお控えください。
施術部位に強く圧迫を加えるようなことは避けてください。
9) リスク・副作用
自己脂肪由来間葉系幹細胞は、患者様自身の脂肪から作っていますので、ご自身に肝炎やエイズが無い場合、それらを引き起こすウィルスの感染の心配は全くありません。ただし、治療後3ヶ月間は概ね月に一度程度の来院により、下記の有害事象がないことを確認する必要があります。
- 皮膚を切開し、脂肪を採取する際、麻酔を使用します。そのため、施術中の痛みはほとんどありませんが、注射の痛みを感じる場合があります。
- 動物由来の原材料(ウシ胎児血清)を用いて製造しているため、稀に過敏症を引き起こすことがあります。
- 注入直後は処置部位に、凸凹が生じる場合があります。
- 針の痕が残ることもありますが、殆ど2~3日程度で目立たなくなります
- 内出血、腫れ、発赤、疼痛、かゆみ、変色、および圧痛などが現れることがあります。(1週間程度)
- ごくまれに、切り傷が化膿したり、壊死(細胞の死)や変色、着色等の外見的に好ましくない有害事象が起こることがあります。
これらの副作用などが現れたら、当院までご連絡下さい。症状を適切に判断して、副作用を軽減できるよう最善の処置を行います。
なお、ADSCの点滴投与後に肺塞栓で死亡した例が過去に国内で⼀例報告されています。しかし、幹細胞投与との因果関係は明確ではありません。当院では万が⼀の場合に備え、救急⽤品を準備するとともに、近隣の救急病院とも連携して緊急事態に対応できるようにしています。
10) 治療を受けられない場合
当クリニック指定の⾎液検査(感染症検査)の結果、陽性となった患者様は、この治療を受けることができません。検査項⽬は以下の6 項⽬です。
- B型肝炎ウィルス(HBV)
- C 型肝炎ウィルス(HCV)
- ヒト免疫不全ウィルス(HIV)
- ヒトT細胞⽩⾎病ウィルス1 型(HTLV-1)
- ヒトパルボウィルスB19
- TP(梅毒トレポネーマ)抗体・RPR法 定性
- 局所麻酔に過敏で、脂肪を採取できない場合
- アトピー性皮膚炎以外で治療中の病気があり薬を服用している方(*薬の種類によっては治療をうけることができない場合があります。)
- 治療する目的の部位が感染している場合
- 妊娠している、または妊娠している可能性がある場合
- 細胞を培養する過程で、ウシ・ブタ由来の成分を⽤いるため、これらの成分に対しアレルギーをお持ちの⽅は、この治療を受けることができません。
その他、医師が不適切と判断する場合があります。
治療を受ける前に主治医と相談してください。
11) 治療が中止される場合
次のような場合は、治療を中止することがあります。
場合によっては、患者さんが治療を続けたいと思われても、治療を中止することがありますので、ご了承ください。
- 患者さんが治療をやめたいとおっしゃった場合。
- 検査などの結果、患者さんの症状が治療に合わないことがわかった場合。
- 患者さんに副作用が現れ、治療を続けることが好ましくないと担当医師が判断した場合。
- 標準的な細胞培養をおこなった結果、個人差等の理由により治療に必要な脂肪由来間葉系幹細胞が得られなかった場合。
その他にも担当医師の判断で必要と考えられた場合には、治療を中止することがあります。中止時には中止の理由を説明します。そして、安全性の確認のために検査を行います。また、副作用により治療を中止した場合も、その副作用がなくなるまで検査や質問をさせていただくことがあります。
■第二種 再生医療等提供計画(治療) 届出
自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いたアトピー性皮膚炎の治療 サカイクリニック62 坂井万里
12) 料金
本治療は保険適⽤されないため、全額⾃費診療となります。
費⽤は患者様の症状、治療回数などにより異なります。治療前に詳細な費⽤を提⽰いたしますので、ご納得いただいた上、治療いただきますようお願い申し上げます。
※海外居住の患者様におかれましては費⽤負担が下記とは異なるため、別途、詳細をご説明させていただきます。
※採取した組織⼜は治療⽤の細胞製剤の輸送時にトラブルが⽣じた場合、再度組織の採取⼜は再培養を⾏う可能性がございます。その際は、別途詳細をご説明のうえ、患者様のご要望をお伺いします。あらかじめご了承ください。
【診察+⾎液検査費⽤】
【施術費⽤】
【細胞保管費⽤】
※【細胞保管費⽤】に関しましては1年毎、任意更新となります。更新をご希望されない場合はお申し付けください。
《 キャンセル規程 》
【診察+⾎液検査費⽤】
いかなる理由でも返⾦不可となります。
【施術費⽤】
組織採取前・・全額返⾦いたします。
組織採取後(施術予定⽇の3週間以上前)・・90%を返⾦させていただきます。
組織採取後(施術予定⽇の3週間前以内)・・80%を返⾦させていただきます。
キャンセルに関しましては、クリニックの診療時間外はお受けすることが出来ません。
特にキャンセル締切⽇が年末年始、当院の夏期休暇や休診⽇に重なる場合がありますので、確認の上、⼗分余裕を持ってお申し付けください。
13) 本治療に関するよくある質問
アトピー性⽪膚炎の標準的な治療としては、保湿剤を使⽤するスキンケア、ステロイド軟膏などの外⽤薬を⽤いる治療、抗ヒスタミン薬などの内服薬を⽤いる治療などが挙げられます。そのほかにも⽣物学的製剤を⽤いた新たな治療など、多くの選択肢があります。
詳しくは下記をご参照ください。
■公益社団法⼈⽇本⽪膚科学会HP
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa1/index.html
■⼀般社団法⼈⽇本アレルギー学会HP
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=4
アトピー性皮膚炎に対する従来の保険診療(ステロイド外用薬、保湿剤など)と再生医療を併用することは可能です。再生医療と並行して、従来の治療を継続することもできます。
ただし、再生医療は、基本的に自由診療となるため、費用は全額自己負担となります。
18歳未満の未成年の場合は親権者の同意が必要になります。